石渡 一郎 園長(美しの森幼稚園)のインタビュー

美しの森幼稚園 石渡 一郎 園長

美しの森幼稚園 石渡 一郎 園長 ICHIRO ISHIWATA

昭和49年(1974年)に設立された『美しの森幼稚園』。2021年4月より園長に就任(東急田園都市線「あざみ野駅」より徒歩5分、「たまプラーザ駅」より徒歩11分)

遊ぶことが学ぶこと

『学校法人石渡学園 美しの森幼稚園』は、私の祖父(石渡 義一)が設立した幼稚園です。そこで事務方を取り仕切っていた叔父が体調不良により仕事を続けるのが難しくなり、声を掛けていただいたのがきっかけでした。サラリーマンをしていました私が、まさか教育者になるとは思ってもなかったのですが、大好きな祖父が作った幼稚園という縁もあり、申し出を受けることにしたのです。
「さあ、やるぞ」となってから、玉川大学の通信教育学部に入学しました。単位取得に必要な教科書がまとめて送られてくるわけですけども、それを読み終える頃には、教育というものへの興味が熟成されていたような気がします。子ども達は、日々変わっていきます。例えば、ここでは跳び箱をするんですが、2週間前には跳べなかった子が、ある日突然跳べるようになっていきます。「なぜできるようになったんだろう?」 注意深く見ていくと、子ども達は遊びの中で練習をしていることに気づきました。体育の限られた時間だけでなく、それこそ一日中、友達の背中や先生の背中で馬跳びを繰り返していたのです。教科書を読むだけでは知り得ない、遊びの中の教育というものを子ども達の成長を通して実感した最初の出来事でした。もちろん跳び箱だけではなく、子ども達の成長は無数に存在し、しかもそれが毎日起きるわけです。興味が尽きないですし、教育というものへの奥深さを今も日々、実感し続けています。

その子らしく成長してもらいたい

子どもは遊びの中で日々学び、成長していきます。端的にいえば、「遊んでなんぼ」だと思うんですね(笑)。これをそれらしい言葉で考えていくと、幅がなくなってしまうように思います。例えば、私の好きな言葉を引用して「質実剛健な子を育てます」としましょう。では、か弱くて繊細だけど、人のことが思いやれる子はいけないのか、となってしまいます。それらしい言葉でまとめようとすればするほど、子ども達の成長に枷がかかってしまうと思うんですね。
キーワードは「その子らしく」。チャレンジ精神が豊富でドンドン先に進む子もいれば、周囲を見て確認してから進んでいく子もいますし、そもそも「行かない」という選択肢を選んでもいいでしょう。自然豊かな環境で、その子らしく育っていってほしいと思っています。

自然の中で得られる経験

舞台となるのが、この“森”です。こちらには、東急線が通る前の里山がそのまま残されています。どんな遊具であれ、人工物は設計者の意図通りにしか動かないようになっています。でなければ、危険が伴うからですね。しかし、自然はそうではないですから、思わぬしっぺ返しを受けることがあります。例えば、森の木に葛(くず)の蔦(つた)が巻きついているのを見て、子どもが飛びついた瞬間に切れてしまうことがあります。運が悪いと尻もちをつくことになりますが、私たちはすべての経験から得られる学びがあると考えているのです。
この間、こちらを卒園して高校生になった子が遊びに来てくれました。聞けば、「今、ニュートンの原理を習っている」そうで、思い出したのが、当園の校庭にある「みかん」だったそうです。彼が言うには、みかんの実が落ちて、しなっていた枝がパーンと戻った瞬間に「原理がわかった」と。ニュートンは落ちるリンゴに着目しましたけど、彼はしなっていた枝に目が向いていたのです。教育現場では原体験という言葉を使います。のちの高等教育につながる原体験を彼はみかんから得たわけですけども、人工物では、なかなか得づらい体験でしょう。都市化が進んだ現代だからこそ、自然での経験は貴重なものとなりますし、今後はよりアクティブな体験をみんなに提供していければと思っています。

親子で一緒の時間を過ごす「どんぐりクラス」

親子の時間と社会的な時間の共有が価値ある時間につながると考えており、2歳児のお子さんは、親子で参加するどんぐりクラスを設けています。ピアノのメロディやリズムに合わせて体を動かすリトミックや、森の中で木の実を拾ってみたり、あるいは当園の畑に季節の野菜の種を植え、収穫までを楽しむといったアクティビティをおこなっています。
これからはトマトやキュウリの季節ですよね。トマトは赤くなると熟れてきますが、じゃあ、緑のトマトはどんな味なんだろうと、子ども達は疑問に思います。実際に食べてみるとまだ美味しくなくて、「熟れる」ということを実感できるわけです。見て、触れて、食べて実感する。これも感覚を通じた学びになると考えています。

地域の皆さんへメッセージ

常日頃、私たちの活動についてご理解とご支援を賜り、誠にありがとうございます。本当に感謝の言葉しかありません。これからも子ども達の健やかな成長を促せる保育に励み、地域に必要な存在を目指してまいります。コロナ禍以前は、憩いの場所として、地域のおじいちゃん、おばあちゃんが遊びに来てくださっていましたが、それも叶わぬご時世となっていました。今後、一段落しましたら、以前のように夕涼み会などを開催したいと考えておりますので、どうぞその節はお気軽に足をお運びください。

お父さん、お母さんは何かと悩みが多いことだろうと推測されます。お困りの際はいつでもなんでも結構ですので、ぜひご相談ください。

 

※上記記事は2022年5月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。

美しの森幼稚園 石渡 一郎 園長

美しの森幼稚園石渡 一郎 園長 ICHIRO ISHIWATA

美しの森幼稚園 石渡 一郎 園長 ICHIRO ISHIWATA

  • 出身地: 神奈川県
  • 趣味・特技: 祭囃子、山遊び(ツリークライミング.etc.)/スキー
  • 好きな本・作家: ビジネス、保育関連/『エミール』(ルソー)『宇宙兄弟』/ヴィゴツキー
  • 好きな映画: 『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』
  • 座右の銘: 「質実剛健」
  • 好きな音楽: ジャズ
  • 好きな観光地: 上野原市

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