インタビュー/三味線教室 奏(そう)

三味線教室 奏(そう) 吉住 小里代 代表

三味線教室 奏(そう)吉住 小里代 代表

この道を志したきっかけや、演奏会に出るまでの経緯をお聞かせください。

邦楽の家で生まれて育ったんです。父は打楽器、鼓や太鼓を演奏していました。歌舞伎の伴奏音楽としての長唄ですね。初めて歌舞伎を観にいったのは中学生の時です。それまで歌舞伎はおじいちゃん、おばあちゃんが観るものと思っていたんですが、実際に目にすると、その音の迫力や美しさに圧倒されてしまって。たちまち歌舞伎の世界に惹かれていきました。歌舞伎を観るようになって今度は、長唄単独の演奏会を観る機会がありました。それも女流、女の人だけによる演奏会だったんです。曲目は『 賤機帯(シズハタオビ)』。子どもを失った母親の哀れさを描いたお話なんですが、これがまたとっても素敵で。女性の気持ちを表す曲でしたから、女の人が演奏することでより儚さが具体的に感じられて。「女性がやったほうが素敵な曲があるんだ。この世界なら自分も…」と。ちょうど同じ時期に私と年の変わらない子が三味線をやっているのを見て刺激されたこともあって、この道に進もうと思うようになったんですね。

大学を卒業する時に、真剣に三味線をやりたい、プロの演奏家になりたいと思いまして。吉住流6代目家元夫人である吉住小三代師の内弟子となりました。朝、先生のお家に行って稽古場の掃除をして、先生が演奏会に出られる時はカバンをお持ちして同行して、舞台の袖から演奏会を観て、という具合でしたね。そういう生活を経て、やがて試験を受けてお名前をいただき、演奏会に出るようになりました。

教室での稽古についてお聞かせください。

最初は自宅でやっていたんですが、生徒さんの利便性を考えていまの場所、フィリアホールでやらせていただくようになったんです。ここに決まるまで、結構探したんですけど、なかなかいい場所が見つからなくて。音をしっかり出せる場所というと限られてきますし、といってカルチャー教室のような形では私の望む一対一のお稽古というのは難しくて。
こちらでは椅子に座ってお稽古をしています。お座敷で、お着物を着て、正座をしてというのが本来の形だとは思うんですが、ここではその事にこだわらないようにしています。年配の方の中には正座がつらい、という生徒さんもいらっしゃいますし、若い人もこのスタイルのほうが入りやすいでしょうから。敷居を低く、間口を広く、といいますか(笑)。
お稽古では、生徒さんおひとりおひとりによってそれぞれ、求めるものが違います。上達が目的という方、楽しい時間を過ごしたいという方。それを見きわめて、一回一回のお稽古に満足して帰っていただければと思っています。皆さんとても熱心で、年配の方が一生懸命やってくれる姿をみると、こちらの方が刺激されてしまいますね。

三味線の魅力についてお聞かせください。

日本には四季がありますよね。四季にはそれぞれ音があって、雪が降る音、虫が鳴く声、川の音、花が散る様子。そういった自然の微かな音、情景をを豊かな感性で表現することが出来るのが三味線なんです。虫の声っていうのは日本独特の表現だと聞いたことがあります。外国では虫が出す音、雑音、としか捉えられないとか。虫の声をいい声と表現するのは日本人だけなんだと。
三味線を一生触らないまま終わってしまうという方は多いと思うんです。ずーっと聞かないで終わっちゃうという方も。それは少し、もったいないことかなと思うんです。日本人である私たちにしか聞こえない音がある。そういう音を、自然を、三味線を通して感じてもらいたい。子ども達の感性を育てるのにも丁度いいものだと思っています。

NPO法人 三味線音楽普及の会の活動についてお聞かせください。

私がお名前をいただいている吉住という家は、 それまでプロの演奏家だけのものだった歌舞伎音楽を、家庭音楽としての邦楽の普及に努めた家なんです。もちろん現在も学校の先生方や地域の皆様のご協力を仰いで日々活動をおこなっています。私も吉住の一員としてこの活動に参加しています。墨田区や横浜市。高校生から小学生まで。最初は『サクラサクラ』から入ってもらって、徐々に長唄に移行していくという流れで。あ、保育園にも行きましたね。これは、ちょっと困ったけど(笑)。絵本の中に音を入れるって感じでやりました(笑)。

最後に皆様へメッセージをお願いします。

全ての分野でグローバル化が問われて久しい時代になっていますが、外国から入れるだけで、この国から出すモノがない、本当の日本の文化を知らないというのは少し悲しい事だと思っています。若い方には、三味線を通して日本人のルーツを知り、世界にはばたいてもらいたいな、と。口はばったいようですが(笑)。
三味線に興味がある方は是非トライしていただきたいですし、全然知らないという方も、ちょっと触ってみてほしい。きっと共感するものがあると思うんです。どこか懐かしいような、心が安まるような。長い時をかけてこの国で育まれた、いわば日本人のルーツですから。
長唄にはストレス解消になるような速い曲もあります。中学生とかすごいですよ、もう夢中になっちゃって。みんなが上手になりましょうってことではなく、自分の出す音で癒されたり、ストレスを解消したり、日常生活を忘れて皆さんが思い思いに楽しんでもらえれば。無になって音楽に浸ってほしいと思っています。

※上記記事は2010.6に取材したものです。
情報時間の経過による変化などがございます事をご了承ください。

三味線教室 奏(そう) 吉住 小里代 代表

三味線教室 奏(そう) KORIYO YOSHIZUMI

三味線教室 奏(そう) 吉住 小里代 代表 KORIYO YOSHIZUMI

  • 愛読書・好きな作家: 東野圭吾
  • 好きな映画: スターウォーズシリーズ
  • 好きな言葉・座右の銘: 温故知新
  • 好きな音楽: 邦楽
  • 好きな場所・観光地: 京都・奈良
  • 出身地: 埼玉県
  • 趣味: 歌舞伎鑑賞、ガーデニング

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