飯倉 妃美子 代表(アトリエ&カフェ キズナ)のインタビュー

アトリエ&カフェ キズナ 飯倉  妃美子 代表

アトリエ&カフェ キズナ 飯倉 妃美子 代表 KIMIKO IIKURA

横浜市の幼稚園にて障がい児保育担当で勤務。平成元年に障がい児を受け入れる統合保育の保育園を設立。現在、横浜市認可保育園を含む5園と川崎市、調布市に11施設、学童保育を運営。2019年「アトリエ&カフェ キズナ」をオープン。

誰もが生きやすい世の中を目指して 

飯倉代表がこの道を志したきっかけを教えていただけますか?  
18歳の頃、保育士として障がい児のクラスを担当していました。そこにダウン症の子がいたんですね。その子はもともと身体の免疫力が弱く、ある日保育園で熱を出して救急車で運ばれ、そのまま亡くなってしまったんです。その後、親御様へご挨拶に伺うと「障がいのある子にとって生きやすい世の中ではないので、これで良かったのかもしれない」とおっしゃったんです。ご家族がそんな風に思われていることがショックでしたし、今の自分では現状を変えられないことがつらいなと感じました。 
 
そんな矢先、当時はまだ珍しかった「統合保育」を導入する幼稚園がスタッフを募集していて、「自分にできることをやるしかない」と思い、そこで働くようになったんです。今思えば、この出来事が私の活動のきっかけだったように思います。 

それぞれの個性を活かせる場所に 

「アトリエ&カフェ キズナ」はどんなところでしょう?  
子どもからシニア、障がい者などあらゆる人々が集い交流できる場所です。生活介護の利用者さんの仕事場として、そして地域の方が動物たちと触れ合うカフェとして運営しています。そもそも開業のきっかけは、「障がい児たちが成人したときに、のびのびと働ける場所をつくろう」と思ったからなんです。
 
一般就労の難しい方は「作業所」というところで働くのですが、ボールペンを組み立てたり、空き缶をつぶしたりというような単純作業を行うことが多いんです。けれど、そういった仕事を誰もが楽しめるかといったら、必ずしもそうではありませんよね。当施設では、障がい者の方がそれぞれの個性を活かして働けるように取り組んでいます。生活介護の利用者さんにはアニマルカフェの動物たちのお世話や接客、手作り雑貨の作成をお願いしています。 

爬虫類やハリネズミまでいるアニマルカフェ  

併設されているアニマルカフェについてお聞かせください。  
動物たちとふれあう場として、たくさんの方にご利用いただいております。1階には「保護犬カフェ」と「保護猫カフェ」があり、地下には「爬虫類&ハリネズミカフェ」があります。  
  
爬虫類とハリネズミとは、めずらしいですね。  
爬虫類とハリネズミは私の趣味ともいえます(笑)ヘビやトカゲに苦手意識を持っている方もいらっしゃるかもしれませんが、爬虫類は飼育環境や餌のやり方で、どんどん見た目が変わるのが魅力なんですよ。家族に無理やり連れてこられたお客様が今ではすっかり爬虫類のファンになり、常連になってくださることもしばしばです。

保護犬、保護猫たちとの出会い  

保護犬と保護猫はどのように引き取られたのですか?  
犬たちは今問題になっている「多頭飼育崩壊」で保護した子や飼い主さんがお亡くなりになってしまった子です。猫たちは私を見ると自然に寄ってくるようになり、保護するようになりました。ある日、猫に呼ばれてついて行ったことがあるんです。すると神社に鞄が捨ててあり、中を開けたら子猫たちが入っていて、慌てて連れて帰ったこともありました。 

ここは保護犬、保護猫たちが安心して暮らせる場所なんですね。  
彼らは虐待や捨てられたことでつらい経験をしてきましたが、施設で暮らすうちに少しずつ人に心をひらいてくれるようになりました。今では人に甘えるのが大好きなんですよ。私たちは動物たちに触れることで癒されているんだな、とつくづく感じます。  

里親探しをされているそうですね。  
「この子を飼いたい」という方がいらっしゃったら、譲渡するようにしています。まずはその方のお家に伺い、動物が安心して生きていける環境かどうかを確認させていただきます。里親に出すということは命を預けることなので、引き渡したあとも飼い主さんと連絡を取り合い、相談にのらせていただいています。

スタッフの皆さんにもお話を伺いました。

生活介護担当者の清藤さおりさん  
この仕事を始めたのは、息子が障がいを持っていたことも大きかったかもしれません。息子が気持ちよく過ごせる場所が見つかるといいなと思い、当施設に足を運んだのがきっかけでした。今は利用者さんと過ごすことが楽しいと感じる日々です。利用者さんから「ここで働けて楽しい!」と言っていただけることが、何よりもうれしいですね。  

保護犬、保護猫カフェ担当の舘岡利子さん  
動物たちを里親に渡すときは寂しい気持ちになりますが、優しい方に飼っていただけたらと思います。入社したばかりなので、「まだまだこれから!」という思いで働いています。どの担当でもしっかり対応できるよう頑張っていきたいと思います。  
  
 爬虫類カフェ担当の中條明日香さん  
地下には様々な種類のトカゲやヘビたちが約40匹ほどいます。エサの取り方や湿度管理がそれぞれ異なるので、最初は把握するのが大変でしたね。「爬虫類を飼ってみたい」という方には、飼い方のアドバイスをさせていただいています。魅力的な生き物なので、ぜひ多くの方に知ってもらいたいです。  

お互いに支えあうことが当たり前の風景に

飯倉先生はどんなことを目標にされていますか?  
障がい者と健常者を分断せず、お互いに支えあいながら交流を深めていく場所をつくることが私の使命だと思っています。毎朝、生活介護の利用者さんと公園へお散歩に出かけるんですが、知的障がいの方が身体障がいのある方が乗っている車椅子を、誰に言われる訳でもなく押してあげているんです。お互いに足りないもの、苦手なことを補い合う姿は見ていてうれしくなります。こういった助け合いの精神が当たり前の景色として、世の中に浸透していくことを願っています。  
 
読者の皆様へメッセージをお願いします。  
当施設は近隣の方だけでなく、遠方にお住まいの方もいらっしゃいます。動物を飼いたくても飼えない方や、動物と触れ合いたい方に楽しんでいただける場所なんです。犬や猫、爬虫類など、様々な動物とふれ合える場所は、他にないんじゃないかなと思います。スタッフの作ったパンケーキやあんみつを召し上がりながら、動物とのふれあいの時間を楽しんでいただきたいです。

※上記記事は2021年2月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。

アトリエ&カフェ キズナ 飯倉  妃美子 代表

アトリエ&カフェ キズナ飯倉 妃美子 代表 KIMIKO IIKURA

アトリエ&カフェ キズナ 飯倉 妃美子 代表 KIMIKO IIKURA

  • 出身地: 京都府
  • 趣味: 料理、トライアスロン
  • 座右の銘: 誠実、ありがとう
  • 好きな作家: 坂口安吾
  • 好きな映画: 「アメリ」
  • 好きな音楽・アーティスト: ポール・マッカートニー
  • 好きな場所: 海

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