大淵 富子 学長(日本料理教室 寛楽)のインタビュー

日本料理教室 寛楽 大淵 富子 学長

日本料理教室 寛楽 大淵 富子 学長 TOMIKO OHBUCHI

料理教室を開かれた経緯と、開業時期について教えてください。

会社勤め、子育て、事業など一通りの人生経験を経て、これからの自分に何ができるか考えたとき、好きなことをやっていきたいと思いました。いろいろ選択肢について考えた結果、やはり一番好きな料理が残りました。故郷の高知をはじめ各地でいただいてきた料理を自分でも本格的に学んでみたいと思い、「料理学校界の東大」の異名を持つ辻料理専門学校の門をたたきました。 62歳で入門したため、わたしがそのときの最年長でした。カリキュラムは大変で、朝早くから晩遅くまで包丁とぎなど道具の手入れや課題などに追われ、まるで板前さんの修業のようにして過ごしましたが、充実した1年間でした。辻料理専門学校に入門したときは、自分で運営する料理教室についての明確なビジョンはなかったのですが、勉強していくうちに、「やるなら専門性の高い本格派を」という目標ができました。卒業後半年で教室を立ち上げ、今年の秋で7年目に入りました。
面白いもので、これまで経験した仕事のすべてが現在の教室での仕事に活きています。特に米国商社での勤務経験は、外国人を教えることに役立っています 。

レッスンの内容やいらっしゃる生徒さんについて、教えてください。

基本的には家庭料理を教えているのですが、「日本料理教室」と名乗らせていただいていることには理由があります。家庭料理と申しますと、さまざまな要素がミックスされ、簡易化しすぎたり俗っぽくなったりします。わたしはインスタントではなく本当の日本の家庭料理を教えたかったので、あえてこの名前にさせていただきました。 そうしますと、必然的に習いにいらっしゃる生徒さんの中心は年齢層の高いご婦人になります。舌も肥えていらっしゃるし、お料理が本来お好きですから、素材にも調理法にもこだわります。そして近くにドイツ人学校がありますから、だんなさんの赴任で一緒にいらした外国人の方も習いにいらっしゃいます。レッスンの内容は、奥様方には1回4000円で中級から上級のお料理を、外国人の生徒さんには基礎コースとして1回3000円で道具の使い方やご飯の炊き方、お出汁(だし)のとり方を中心とした料理法をお教えしています。中級~上級コースは若干レッスン料が高めですが、市場で仕入れた魚やお野菜、行きつけのお店で買ったお豆腐などを使っています。できるだけ本物志向の味を楽しんでいただきたいためです。
わたしは日本料理を「根絶やし」にしてはいけないと常日頃から考えておりまして、若いお母さんとその予備軍であるお嬢様方に脚をお運びいただけたらと思っているのです。これからは外国人の生徒さん同様、年間を通じた基礎コースのカリキュラムを作り、本当の家庭料理のよさを伝えていきたいと考えています。まずは「嫁入り道具」としてお嬢様方に料理を習っていただくことを、お母様方がご検討してくだされば幸いに思います。また今後は、お勤めの方を対象としたコースも考えてみたいと思っています 。

教室の名前の由来について教えてください。

「寛楽」とはゆっくりと楽しむという意味です。わたしはたまたま好きでこの言葉を選んだのですが、尊敬する父の名前が「寛一」で、結果的にそこから一字いただくことになりました。生徒さんにはだいたい4名くらいのグループを作ってお越しいただいていますが、まさに「寛楽」という言葉通り、お料理とおしゃべりを思う存分楽しんでいただける教室になりました。外国人の生徒さんからは、教室の様子を写真に撮ってコメントをつけたスクラップブックを頂戴し、現在ではそれがわたしの「宝物」になっています。 市ヶ尾と自宅の庭で野菜や香辛料を育てていますが、こうした手のかかる仕事も「ゆっくり楽しむ」という理念やライフスタイルにかなっています。1年を通じて使うごま、山椒、みょうがのほか、常備菜になるラッキョウなども育てています 。

先生ご自身が、旅先やお店などで感動し是非教室で教えたいと思われた料理があれば、教えてください。

先ほども申し上げましたが、生まれ育った高知の料理を中心に、郷土料理は好きですし是非教えていきたいと考えています。高知のごちそうといえば「さわち料理」ですが、わたしはこれをパーティ料理としてお出ししています。そして日本各地のお寿司の文化、汁椀の文化も多様で奥深いのです。三平汁、潮汁、沢煮碗などこれまでのお献立に取り入れた汁椀だけを数えても相当な数に及びます。以前しめさばを作った後のサバのアラを使って船場汁を作りました。アラの臭みを消し、生姜を利かせますと、調味料は少しでも十分です。生徒さんからは、「サバのアラがこんなにおいしいなんて!」と感動されました。うれしかったですね。 海外からいらっしゃる生徒さんには、まず出汁の味をしっかり覚えていただくようにしています。残念なのは、海外では出汁をとるための素材が手に入りにくく、どうしても粉末を使って作ることが多いのだそうです。しかしそんな状況でも、少しでも「本物の味」に近づけて料理を楽しんでいただきたいと思います。

地域のみなさまへメッセージをお願いします。

お料理を通じて国内外のさまざまな方とお友達になれることがうれしいです。少しでも和食にご興味があれば、お電話を頂戴したいと思います。わたしの現在の生きがいと夢は、料理を伝えることで幸せな家庭作りのサポートをさせていただくことです。わたしは現在69歳ですが、できればあと10年はこの仕事を続けて日本料理を伝えて活きたいと考えています。長年通っていらっしゃる人もいて、同じ料理をお出しできないため、お献立を考えるのがとても大変ですが(笑)。
※上記記事は2013.12に取材したものです。
情報時間の経過による変化などがございます事をご了承ください。

日本料理教室 寛楽 大淵 富子 学長

日本料理教室 寛楽大淵 富子 学長 TOMIKO OHBUCHI

日本料理教室 寛楽 大淵 富子 学長 TOMIKO OHBUCHI

  • 愛読書: ヒューマン・ドキュメンタリー。特に感動したのは「生かされて」(イマキュレー・イリバギザ/スティーヴ・アーウィン著、PHP)、ほかにも乙川 優三郎の歴史小説なども好きです。
  • 好きな映画: インド映画「大地のうた」(1955年、インド。サタジット・レイ監督)に大きな感銘を受けました。このほかにも人生について考えさせられる作品。
  • 座右の銘: There is a will, There is a way 意志があれば、道ができる。
  • 好きな音楽: クラシック
  • 好きな場所: 山など緑の多いところ
  • 生年月日: 1944年10月20日
  • 出身地: 高知県
  • 血液型: O型
  • 趣味・特技: 旅行、読書、観劇など

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