外山 高嗣 代表取締役（トヤマ時計眼鏡店)のインタビュー

父が倒れたことで家業を継ぐ思いが鮮明に

「トヤマ時計眼鏡店」は、もともと父が1978年に開業した店です。僕が小さかったころは、家業を子どもが継ぐのは当たり前という時代だったので、自分も漠然と「自分はこの店を継ぐんだろうな」と思っていました。そんななか、中学2年生のときに父が心筋梗塞で倒れたんです。そのときに「この店を継ごう」と決心したというか、漠然と考えていたことがはっきりと鮮明な気持ちになりました。

高校は商業科のある学校に通っており、通学は自転車で30分。行きはずっと上り坂で毎朝、しんどかったですね（笑）。大学も付いている高校だったのですが、進路相談で先生に「お店を継ぐのであれば、4年間大学で過ごすより専門的な知識を学んだほうがいいのでは」と言われたのをきっかけに、滋賀県にある専門学校に3年間。眼鏡、時計、宝飾品についての技術をみっちりと学びました。

そして、卒業後に指輪などを直す技術をさらに深めようと彫金師の下に2年半ほど弟子入りをして、20代後半のときにこの店に戻り、父と一緒に働き始めました。父は今も現役ですが、２代目の僕がメインでやらせていただいています。

じっくりと時間をかけてライフスタイルにあった眼鏡を

時計や宝飾品は修理がメインですが、眼鏡は販売にも力を入れています。最近は眼鏡を作るのもコンピューターで視力をパパっと計測したりもしますけど、それが合わない目の方もいらっしゃいますので、当店ではじっくりと時間をかけて問診、計測をしていきます。視力の計測はもちろんですが、その方の生活習慣なども伺います。どのくらいの距離のものを求めているのか。遠くを優先するのか、室内が見やすいほうがいいのか。趣味を聞いたりもしますね。楽器をやる方だと手元が見やすいほうがいいでしょうし。そういうことをお話しながら頭のなかでいろいろと考え、その方にあった最善の度数と、最適なレンズを使った眼鏡をご提案しています。

目の中の筋肉のバランスもあるので、合う眼鏡というのは本当に人それぞれ。度数優先にしてハマる人もいれば、そうじゃない方もいますし、脳の負担を減らすような感じの眼鏡をおすすめすることもあります。そこは、もう経験値ですね。難しい目の方だと販売後も「大丈夫かな」と思うのですが、そういった方から「今もバッチリです！肌身離さず使わせてもらってます！」という声をいただくとホッとしますし、すごく嬉しいです。

１級時計修理技能士としての確かな技術

あまり知られていませんが、時計の修理にも国家試験があるんですよ。僕は、１級時計修理技能士の資格を持っていますので、「資格を持っている方に直してほしい」とネットなどで探して来ていただく方もいらっしゃいます。県外からの方も多いですし、地元の方はもちろんですけど、そうやってわざわざ探して来てくださるのは本当にありがたいことだなと思います。

時計の場合は、形見の品など思い出が詰まっているものが多いので、修理後に「おじいちゃんやお父さんが使っていたものが動くようになってよかった」という声をいただくと、本当に嬉しくなります。やっていてよかったなと思う瞬間のひとつです。

父の店を継いだときから「いつか親父よりうまくなってやる」という思いは持っていますが、古い掛時計などの修理はまだまだ父にはかないません。たまに「自分のほうが上かな」と思うときもありますが（笑）。自分の仕事ぶりに関して何か言葉をもらったことはありませんが、お客様とお話するなかで「息子は僕よりうまく直しますよ」と言っているのを聞くと、やっぱり嬉しいですね。２代目として、もっと頑張ろうと気合が入ります。

藤が丘商店会の会長という一面も

彫金師さんのところで修業をしていたときに、「将来、商店街のこともやるんだから、人付き合いを学んでおけ」と言われて、親方の知り合いの藤沢の質屋さんに半年ほど働いていたことも。そのときは、「商店街の活動なんて……」と思っていたんですが、振り返るとすごく先見の目があったなと。僕は今、藤が丘商店会の会長をやっているんですが、当時の肌感覚の経験がすごく活きているんですよね。人生、何が役に立つか分からないなと思いますね。面白いです。

無理かなと思うものも諦めずに相談していただけたら

当店の眼鏡は、チェーン店よりも少し値段が高いかもしれませんが、その分、しっかりとお話を聞いて検査にも時間をかけ、その方のライフスタイルにあわせた無理のないものをご提案しています。ですので、見え方に悩んでいる方はぜひ一度ご相談しにいらして下さい。

また、時計や宝飾品は大事なものをお預かりすることが多いので、誠心誠意向き合って直させていただいています。ですので安心して、ご依頼ください。外れなくなってしまった指輪も、当店なら切ったあとのお直しも可能です。逆に指が太くなってサイズが合わなくなったものも修理ができます。もう無理かなと思うものも、もしかしたらうまく直せるかもしれませんので、あきらめずにご相談いただけたらと思います。

藤が丘商店会の会長としては、地元をもっと盛り上げていきたいという思いもありますので、どこかホッとできる藤が丘という街の良さを広げつつ、当店も街に馴染んだアットホームなお店であり続けたいです。

※上記記事は2021年6月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。