竹之内 一行 オーナー（エスポア しんかわ)のインタビュー

酒屋の後継ぎとして、自分の道を歩みだすまで

私は『しんかわ酒店』の二代目になります。父がお店を開いたのは1967年のこと。当時は味噌や醤油の量り売りも扱う、一種、町の商店のような感じだったようです。それから徐々にお酒を増やしていき、父が好きな日本酒を主に扱ってきました。それがワインをメインに扱うようになったのは、私の代から。きっかけは、父の代から出入りしていたある人に「フランスに来てみないか」と誘いを受けてのことでした。その方はフランスのボルドーで武道を教えておられましたのですが、土地柄、ワイナリーの子ども達が生徒になりますから、ワインをご馳走になるようになり、やがてワインに興味を惹かれるようになったそうです。「武道を教えにいって、ブドウを教わった」とよく言われてましたね（笑）。私はその方がアテンドしてくださるツアーに参加し、ワインに触れることになりました。当時は何の知識もないわけですけど、日本に帰ってきて調べてみると、良いお店ばかりに連れていってもらったことを知りました。そこから俄然ワインに興味が湧き、スクールなどで勉強をするようになったのです。
ツアーの中で、名も知れない田舎の街で、家族だけでワインを作っているワイナリーに足を運んだことがありました。それがもうびっくりするほど美味しくて……。「こういう商品を日本で紹介したい」と思い、今のお店のスタイルが出来上がっていったのです。

ナチュラルワイン専門店として

当店はナチュラルワイン専門店です。その定義は難しいのですけども、1つ鍵となるのが、酸化防止剤です。酸化防止剤は品質を安定させてくれますし、グローバルに流通しようと思えば、これを使うことで輸送中のリスクなどを回避出来ます。ですから、大きな規模になればなるほど、使わざるを得ないという面もあるんですね。私がナチュラルワインを扱い始めた頃は、そうした言葉はもちろんありませんでしたし、”自然派“と言われるワインを作っている人自身、その自覚はなかったように思います。彼らにとってみれば酸化防止剤を使わないのは昔からで、ゆえに、市場に合わせるのではなく、自分たちが飲みたいものを作っているという感覚だったのでしょう。

当店のお客様は、お客様同士のつながりで紹介を受けて、という方が多いですね。それまで都内まで足を運ばれていたのが、「ここでこんなお酒を打ってるなんて知らなかった」という方も少なくありません。このワインを飲み始めると、「他のはもう飲めない」という方もいらっしゃいますよ。

自信を持ってお勧めできるお酒を皆さんに

ワイン以外にも様々な商品を扱っていますが、最近は「宇宙ビール」という商品が人気を集めていますね。山梨県の北杜市で作られているビールですが、惜しげなく材料が使ってあって、特にホップ感がすごいビールです。普段ビールを飲まない方も「これなら飲める」という方もいらっしゃいます。
ワインでは、「マルク・ペノ」がお勧めです。ミュスカデという地域で作られているワインですが、一般にこの地域のワインは“格”が落ちると言われています。私自身、そうした先入観を持っていたのですが、マルク・ペノのワインを飲んで、目から鱗が落ちた気がしました。格の偏見を取ってくれたワインと言うのでしょうか。派手さはないのですが、じわーっと美味しいワインです。ずっと飲んでいられますし、しばらく飲まないでいるとまた飲みたくなる、そんなワインですね。

もっとワインを楽しんでいただけるように

マルク・ペノは有志の酒屋のグループで輸入しています。コロナ禍ではなかなか難しいのですけども、以前は月に1回集まり、お酒の勉強をする機会がありました。このグループのお店ならば、安心してお客様にご紹介出来ます。グループでの活動も然りですが、素晴らしいお酒をもっともっと世の中の人に知っていただきたいという想いがあります。実は以前、この近くでワインバーを営んでいたことがあります。機会がありましたら、またお酒を楽しめる空間を作れたらと思っています。

地域の皆さんへメッセージ

ワインをもっと身近に楽しんでいただけたらと思います。「今日、これを食べるんだけど、合うものはない？」ですとか、そんな感じで大丈夫です。お気軽に何でもお聞きください。今後も、作っている人の熱い想いを感じられる商品を扱っていきます。体に優しいナチュラルワインを、ぜひ一度お試しください。

※上記記事は2022年3月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。