井上 悦一 代表（toconova)のインタビュー

この道を志したきっかけや現在に至るまでの経緯をお聞かせください。

実家が床屋さんでしたから、その影響を受けて・・・とはいかず、私のやりたいことは違うことでした（笑）。プロ野球選手になりたかったんです。高校までは本当に野球ばかりで、その夢が断たれたとき、頭に浮かんだのがこの職業でした。他の職業は馴染みもありませんし、そもそも考えられなかったというところですね。高校を卒業後は理容学校に進み、都内のサロンに勤めました。そちらは床屋さんとはいっても男性のお客様ばかりではなくて、いわゆるユニセックスサロンという形でした。そこでの経験があって、「女性をキレイにする」という仕事、美容への転身を考えだしたということになります。
その後、通信教育で美容免許取得を目指すのと同時に美容院で経験を積みました。そのお店に3年。さらにステップアップを目指し、自由が丘に本店のある『Of HAIR（オブヘアー）』に修行の場を求めました。そちらで10年を過ごし、2012年2月14日に『toconova（トコノバ）』をオープンしました。
“toconova（トコノバ）”という名前には、そう名付けた理由が当然あるのですが、その部分には実はそれほどこだわりがありません（笑）。むしろ、生きた名前として、皆さんんに愛着を持っていただけるお店にしていきたいと考えています。

『toconova』のコンセプトを教えてください。

『toconova』は、お客様1人ひとりと向き合う時間を大切にし、あなたのベストなスタイルを一緒に考え導いていきたいと思っています。スタイルについての悩みや希望は、専門家でない限り、他人に伝えるのは難しいものです。私どもの仕事はそのお客様の思いを汲み取り、形にしていくことと捉えています。お客様との距離を近く、その人を知ることに努め、その方だけのスタイルをデザインしていきたいと考えています。
そのためにも、1つひとつのモノにこだわった“上質”を追求していくことが大切になってきます。

“上質”へのこだわりをご説明ください。

こだわっている部分・・・、パーマやカラーを例にしましょう。現在は、ある意味簡単な薬剤が多く出回っています。それを使いさえすれば、ある程度のレベルは確保出来るというお手軽なものです。料理に例えると、この調味料を入れさえすれば美味しくなるといったところでしょうか。私はそれを塩やコショウを利かせて、食材の持つ素晴らしさを更に引き立てていくということを目指しています。それには薬剤のスペックを完璧に把握していなければなりませんし、素材そのものをしっかりと見極める感覚が重要になります。平均点を求めるのではなく、素材素材に合ったデザイン作り。それを可能にすることが私の思う“上質”だと考えています。
また、そのデザインを長く楽しんでいただくために、当店では電解処理水やオーガニックシャンプー、低アルカリ処方の薬剤を使用するなどしています。
お客様のあらゆるニーズに応えていけることを、プロとしての本分と考えています。

美容師になって良かった点は、どんなところでしょうか？

美容師になって良かった点ですか・・・、私の場合、そもそも不純な動機からのスタートでしたから（苦笑）。なにがなんでも美容師になりたいというわけではなかった。でも、働き始めてみると違いましたね。それがDNＡの問題なのかどうかはわかりませんけども（笑）。まず人と話をするのが好きだということもそうですし、自分が作ったものをお客様に喜んでいただけるというのは、もちろん嬉しいことで、一番根っこにあるものだと思っています。
この仕事は自分の努力がお客様の笑顔につながっていきます。逆もしかりです。その意味ではとてもシンプルな仕事ですし、そう思えることが、努力をし続けていけることにつながっているのかとも思います。

最後に地域の皆様へメッセージをお願い致します。

お店を開いた時の一番のコンセプトが「人と人をつなぐ場所でありたい」ということでした。お客様とスタッフ、あるいはお客様とお客様とをつなぐということですね。ダイニングテーブルを配したセット面はそのためのものでもあります。このコンセプトは私が床屋さん出身だということが大きいのかもしれません。田舎の床屋さんって、ただお茶を飲んで、テレビを観て、それだけで帰るという方もいらっしゃるんです（笑）。
美容室に、いわゆる格式のようなものは必要ないと思っています。お客様が身構えてしまうような、そんな“高さ”はいらないんです。誰もが気軽に来れる場所であって、かつ、何でも相談出来る場所。お茶でも飲みにくる感覚で気軽にお越しいただければと思っています。

※上記記事は2012.12に取材したものです。
情報時間の経過による変化などがございます事をご了承ください。