櫻花堂治療院 大久保 昌哉 代表 MASAYA OKUBO
大手スポーツクラブでインストラクターとして働く中で、自身の腰痛をきっかけに鍼灸と出会う。呉竹鍼灸柔整専門学校で本格的に鍼灸を学び、痛み専門治療院などを経て、中医鍼灸・漢方研究会三旗塾入塾。
「さくら堂治療院」金子朝彦を師事する。三旗塾理事。
大手スポーツクラブでインストラクターとして働く中で、自身の腰痛をきっかけに鍼灸と出会う。呉竹鍼灸柔整専門学校で本格的に鍼灸を学び、痛み専門治療院などを経て、中医鍼灸・漢方研究会三旗塾入塾。
「さくら堂治療院」金子朝彦を師事する。三旗塾理事。
高校生の時から体に携わる仕事をしたいと思っていて、スポーツトレーナーの専門学校を出ました。ゆくゆくはプロ野球選手のトレーナになりたかったんです。スポーツジムに就職して1年目の頃に、ある先輩に出会いました。体の知識が豊富で、聞いてみたら鍼灸師の学校に行っているとのこと。鍼灸に興味を持ったのはその時からです。
それからしばらく後に、レッスンのやりすぎで腰を痛めてしまいました。トレーナーというのは100%の力を120%に引き上げるような仕事。でもそれ以下の人を100%にする、つまり治す技術というのはどういうものなんだろうと思ったんです。それで自分の腰の治療も兼ねて、いろいろなところへ通ってみました。でも一向に良くならない。それで先ほどの先輩に相談してみたんです。そうしたら彼が通っている鍼灸学校の先生の治療院を紹介してくれました。
実際に治療院を訪れてみると、先生は僕の顔を見るなり「胃腸が弱いね」と言い、そして脈を見て「寝不足だね」と。占い師のようにズバズバと言い当てるんです。そしていざ治療に入るとある腰のツボに対して「多分、ここだと思うんだよね。ただ申し訳ないけど、雷が落ちるかも。ちょっと我慢してね」と言いました。雷、本当に落ちましたね。ズン!って感じで。そして今までの痛みがサーッと引いていったんです。これが今の師匠との出会いでした。
この仕事だ!と思って鍼灸の専門学校へ入学したのが今から10年前です。櫻花堂治療院を開院した今も、師匠の元で学び続けています。患者さまに思うような効果が出なければ師匠に相談したり、本を読み直して基本に立ち返ったり。師匠が言う通りこの仕事は「死ぬまで勉強」です。だから同じ症状でも1年後は違うツボに鍼を打っているかもしれない。日々ベストの治療を考えながら、積み重ねていくことが大事だと思っています。
師匠からは今の体がどんな状態にあるのかを診て、それを戻す理論を叩き込まれてきました。伝統中医学には体の状態を診る一つのものさしとして「実証」「虚証」というものがあります。その人のどこに傾きがあって不調が出ているのかという視点で診るので、鍼治療というのはオールマイティに使えるんですよ。極端な話、一つのツボに刺すだけで便秘と頭痛が同時に解消することもある。つまり大元となる幹の部分は同じで、それが枝葉に分かれて頭痛になったり、便秘になったりしているんです。
また、中医学では湿気による不調は「湿邪」によるものと考えますが、これも頭の方に行けば頭痛になるし、腰に行けば腰痛になる。いわゆる天気病とか気圧病というものですね。鍼治療はその人の体質や体の状態ももちろんですが、天気によっても変わります。雨の日は水を裁かなければいけないから、ツボを一つ変えてみたり。料理と同じ、結果はさじ加減一つで変わります。
今、不眠症で悩んでいる方が多いと感じます。睡眠改善に鍼治療はとても有効なので、もっと広めていきたいですね。一方で、最近多いのがスポーツ時の怪我や痛みの治療で、僕の経歴を知って来院される方もいらっしゃいます。これも単なる怪我というよりは、元を辿ると体内の水分不足が原因と考えられるんです。例えるなら夏場のアスファルトに落ちている輪ゴムのような状態。カラカラで伸ばすとすぐに切れる、あんなイメージです。
単純に水を飲めばいいというわけでもなくて、体内に水があっても、それがうまく流れていない場所がある。そこを正しく戻すのが鍼の役目です。
当院ではお灸治療も行なっています。鍼が苦手な患者さまや温めた方がいい場合にお灸を使用します。以前、寝汗のお悩みがある患者さまがいました。元々は膝の治療でいらしていて、その流れで鍼で治療をしていましたが、思うように効果が出ない。そこでお灸に変えてみたところ、寝汗がピタッと止まったんです。僕にとっても新しい発見でした。同じツボに鍼や灸をしても人によって全く違うゴールに向かうこともあります。本当に治療しながら学ばせていただいています。
健康な状態というのは体の中の隠と陽のバランスが取れている状態です。先ほどの寝汗のお悩みですと、体内に熱がこもっていたり水分不足で隠陽のバランスが崩れていると考えられます。ラーメン屋の寸胴をイメージしてください。火にかけて沸騰させ続けていますが、ほんの少し水道を捻って水を垂らしていますよね。これでバランスを取って吹きこぼれず適正な温度を保っています。この患者さまは蛇口が閉まっている状態「隠虚」になって、寝汗になって噴き出していたのではないかと思います。
中医学は問診が本当に重要です。先ほどの例でも虚と実を間違えると大変です。実に傾いている状態というのは、例えれば空気でパンパンになったタイヤのようなもの。そこにまた空気を入れればパンクします。虚と実を正しく見極めてうまくプラスマイナスゼロにするためには、色々と話を聞いたり所作を見ることが重要になります。診療所に入ってきた瞬間から問診は始まっていて、歩き方、声の調子、カルテの字からも患者さまの状態を読み取ります。
鍼灸師として常に心がけているのは、決めつけないということ。知識が増えるほど、「そういう症状ならこの治療」と決めてしまいがちです。でもそれは仮説に過ぎません。さらにその仮説を正解にするための誘導尋問のようなことをしてしまうのが一番怖い。だから決めつけないで、いろいろな可能性を考えて話を聞く。独りよがりにならないように気をつけています。
鍼灸の治療はなかなか効果を感じにくいのではと思う方もいるかもしれません。僕が目指しているのは、1回の治療でお困りごとの半分くらいが解決すること。人によってはその場で変化を感じますし、感じにくい方でも翌日あたりには調子の良さを感じると思います。
一方で調子が良くなるとなかなか治療へ足が向かないと思いますが、やっぱり養生として定期的に通っていただけるといいなと思います。また木に例えますが、葉っぱが完全に枯れてしまえば、皆さん治療に行かれるんです。でも枯れそうになっていたり元気がない未病の状態や、「なんとなく不調」を感じた時にも来ていただけると大事にならずに済むはずです。
まずはこの長津田で、多くの方が「困ったら櫻花堂へ行けばいい」と言ってもらえるような鍼灸師になりたいと思っています。緑区jpを見たと言ってくださった方には、メニューから1,000円割引きいたします。まずは騙されたと思って来てみてください(笑)。
※上記記事は2023年5月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。
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