この道に至るきっかけと、これまでの経緯をお聞かせください。
私の祖父は、外科医でした。母を通じ、祖父の話はよく耳にしていて、小さい頃より「外科医になろうかな…」という思いを持ち続けていたのです。そのまま外科医への憧れを抱いて育っていったのですが、高校時代の親友があるとき、「お前は歯医者が向いてるよ」と口にしたことがありました。彼のお父さんは内科医で、おじさんが歯医者さんであったことから、両方と私を見比べて言ったことだったのでしょう。外科医か、歯医者か。迷った私の背中を押してくれたのが、「母さんを助けてやれ」という父の一言でした。そのことが最後の決め手となったのです。母のことが常に頭にあったからでしょう、大学に進んでからはとにかく一生懸命に学んだ記憶があります。私は、歯科大学の2年生時から歯科医院で助手も勤めていました。母のために一刻も早く技術を得たいと、必死だったんですね。それからほどなく、先輩に当たる先生に義歯を作っていただけることとなり、調整は私が自宅で施しました。食べてもらって、当たるところをすぐに直す。それはもう、お抱え歯科医のようでしたよ(笑)。母には大変喜んでもらえました。
大学を卒業後、相模原の矢部というところで勤務医となりました。ここでも運命というんでしょうか、そちらの院長先生が急遽田舎へと戻らなければならなくなり、私がそのあとを引き継ぐこととなったのです。その矢部で24年が経過したのち、2008年に現在の地(東急田園都市線・青葉台駅から徒歩8分)へと移転をおこないました。本年(2015年)の4月に、医院は30周年を迎えることになります。
『うかい歯科医院』の理念を教えてください。
「親切で最適なデンタルサービスを提供し続け、より多くの方々に、笑顔で元気になっていただく」 当院の理念であり、1つひとつの言葉に私の想いが詰まっています。中でも、「最適」ということは非常に重要です。最適は、その方その方で異なります。Aさん、Bさん、Cさん、みなさん考えてることも、過去の経験も、お口の状態も違うわけです。そしてなにより、その時点での理解・認識が違ってきます。だからこそ、その方にとっての最適をヒアリングを重ねることによって探していかなければならならいのです。
ヒアリングでは、患者さんのエモーション(感情)を汲み取ることも大切なことです。私の説明に対して、その方はどう思われたのか。「良いな」と思われたのか、「少し恐い」と思われたのか。エモーションにこだわり、さらに最適をさぐっていかねばなりません。
これは私のアメリカ人の友人から教えられたことなんですけども、コミュニケーションのポイントは、お互いが情報を出し合うことにあります。つまり、患者さんが話し、私も情報を出していく。1つのバケツの中に情報を出し合い、それを共有することに情熱を傾けていくのです。形としては私がリードしていくことになりますが、回を重ねるごとに患者さんから提案が出てくるようになります。「こういうの、出来ませんか?」と。本当に様々なアイデアが出てきますよ。患者さんが歯科の知識を手にしていく感覚。これは私にとっても嬉しいことなのです。
バクテリアファクターとフォースファクターについてお話ください。
お口の病気は、バクテリアファクターとフォースファクターの両方から起こってきます。バクテリアとは、つまりは細菌のこと。フォースについては、ご存じない方が多いかもしれません。フォースとは、咬み合わせであり、掛かる力のこと。咬み合わせは全体が均等に接触していることが理想ですが、ぶつかりが強く、負担が強いところは、トラブルを起こしやすくなってきます。負担が強ければその歯を中心として隙間が出来始め、治療部分に小さなひびが起こり、そこから虫歯菌が侵入していきます。フォースファクターの概念については、私の師であるフロリダのピーター・E・ドーソンより学んだものです。痛みが生じる。詰め物がとれる。歯ぐきから血が出る。そこには必ず因果関係があります。その要因をバクテリアファクターとフォースファクターから探り、原因を元にして対策を検討してくのです。その対策には、多くのものがあります。そして0か100か、ではありません。この方法を採れないにしても、こっちの方法は採れるかもしれない。患者さんとの共同作業により、最善を求めて治療は決められていくのです。
患者さんに、「どうなってもらいたい」というゴールはありますか?
初めにお話しした理念の最後に、「笑顔で元気になっていただく」とありますよね。元気とはエネルギーに満ちあふれた状態であり、「健康になるという事は生きてゆくエネルギーを高めるという事」というのが私の考えです。虫歯がない、歯周病がないというだけでは、健康とは言えません。その方が元気に見えないのはなぜなのか? そこには、しっかり食べれることや、見た目のきれいさも含まれるでしょう。お悩みの元を取り去り、元気になっていただくのが私たちに課せられた役割と考えています。
最後に地域の皆様へメッセージをお願いします。
デンタルサービスとは、歯科の治療それだけを指しているのではありません。初めにおとりする電話も、表から見えている様子も含めてのことなのです。歯石除去や着色をとって欲しいと思われている方は少なくないようなのですが、どうしても二の足を踏まれる方もいらっしゃる。そこには、歯科への恐怖の感情が介在しているケースが多々あるように思います。それはそうです。歯石除去に行って痛かったら、「二度と行きたくない」となって当たり前です。当院では衛生士が相互に技術チェックを繰り返しています。その時に大事なことが、どうすれば患者さんは辛くないのか、ということ。せっかくお越しいただいた皆さんの未来の予防の可能性を消すことは、厳に慎まなければなりません。
アメリカでは、歯石除去だけを希望する場合は「ジャストクリーニング」、検診だけの希望なら「ジャストチェックアップ」とおっしゃいます。ジャストクリーニングにジャストチェックアップ。その様なご要望だけでもどうぞお越し下さい。どんどんリクエストをいただきたい。その想いに応えていくのが、我々の使命なのです。
※上記記事は2015.3に取材したものです。
情報時間の経過による変化などがございます事をご了承ください。
うかい歯科医院 鵜飼 美憲 院長 YOSHINORI UKAI
- 出身地: 神奈川県
- 趣味・特技: ドラムス
- 好きな本・愛読書: 7つの習慣
- 好きな映画: 愛と青春の旅立ち
- 好きなアーティスト: 山下達郎
- 好きな言葉・座右の銘: 努力
- 好きな場所・観光地: 大さん橋