歯科医を志したきっかけと、お父様のクリニックを引き継がれた経緯についてお聞かせください。
父をはじめ、叔父、叔母が歯科医でしたので、身近な職業でした。患者さんの治療をする家族の仕事ぶりを見ていて、自然と自分の将来の姿を重ねるようになっていましたので、迷わず歯科大学に進学しました。小学校低学年のとき父にしてもらった虫歯の治療は相当痛かったのですが、少し時間が経って高学年になりおじさんに診ていただいたときはあまり苦痛に感じず、子供心にも治療技術が進化していることがわかりました。将来性の高い職業であることも、背中を押しました。
大学での専攻は補綴(ほてつ)学です。修復物を作って、虫歯などで破損した歯を復元したり保存する技術を学びました。こちらを選んだ最初の理由はお世話になった先生がいらしたからだったのですが、勉強を進めるうちにその面白さに惹きつけられ、現在に至っています。やはり開業するにあたり、補綴学を通じて被せ物や詰め物の技術を広く深く勉強できてよかったと思っています。大学卒業後は1年間の研修を経て2か所のクリニック(2か所で6-7年)でお世話になり、さらにおじさんの歯科医院で1年ほど修行しました。
このクリニックはしばらくほかの方にお貸ししていた時期があります。お貸しした方々が丁寧に使ってくださったおかげで保存状態はよく、開業は比較的スムースでした。わたしが開業したのは2011年の4月で、かれこれまる4年になりますが、地域のみなさまに支えられて診療をさせていただいています。
診療方針について教えてください。
基本的に保険治療を中心とした治療法をご提示していますが、昨今は治療法のバリエーションが増えてきましたので、ご興味がおありの患者さんには自費治療を含むさまざまな選択肢をご提案しています。たとえば虫歯治療ですが、虫歯の削る個所を最小限で済ませられる3Mix-MP法などの治療法があります。これらの治療法では、虫歯を少しだけ削って患部に抗生剤を塗布し、その上に被せ物をしておしまいです。薬剤がばい菌を殺すと同時に悪くなった歯の再石灰化を促すので、従来のように悪いところをすべて削らずに済みます。
入れ歯も患者さんの口になじみやすく装着しやすいものが出てきました。これは「ノンクラスプデンチャー」といって、金属のばねを使わない入れ歯です。材質は合成樹脂系で、やわらかく装着が自然なこと、金属を使っていない(一部使っている種類もあります)ので見た目が美しいという利点があります。従来の金属ばねを使った硬い入れ歯が合わない、あるいは装着していて違和感を感じる患者さんには、ご希望に応じてこのような入れ歯をご紹介しています。
ご来院される患者さんの年齢層と、アドバイスしたいことについて教えてください。
当院には比較的若い患者さんも多いですが、やはり中高年の方やご年配の方が増えてきています。その層の方を中心にやはり根気よくやっていただきたいことは、歯周病を進ませないためのケア。もっとも重要なのはプラーク(歯垢)コントロールで、さまざまな視覚資料を使って歯周病の原因になるものをご提示しています。そして歯の染め出しをしてどこに磨き残しがあるのかをお見せして、歯ブラシ、歯間ブラシ、フロスの使い方をご指導させていただいています。
厄介なのは、歯垢のほかに「バイオフィルム」という細菌の塊が歯に残っていることです。これはお風呂場や台所の三角コーナーなどにとりついているぬるぬるした膜のようなもの。これも歯ブラシでこすれば取れますので、取り残さないようにしていただけたらと思います。歯垢とバイオフィルムは、取り残すと唾液の中の成分を吸収して固くなり、歯石としてこびりつきます。こうなると歯科治療でないと取り切れません。口の中を完璧にきれいにすることはなかなか難しいため、やはり定期的に受診してお口の中を予防していただくことが肝要です。
重度の歯周病の場合、定期的にメンテナンスして歯石除去をしてこられた方が5年後に歯を失う本数は平均して0.5本であるのに対し、メンテナンスしていない方は5本であるという外国の研究があります。定期検診をする事で歯がなくなる本数が1/10になるのだそうです。また年齢を重ねると抵抗力が落ちますので、歯周病を通じて体の健康を害するケースもあります。このことを頭の片隅にでも置いていただけたら幸いです。
診察で心がけていることについて、教えてください。
帰り際に痛い治療をすると、記憶に残りやすいのだそうです。最近は治療技術も上がりそのような強い痛みを伴う治療は少なくなっているのですが、患者さんにとってショックの大きい治療ほど時間の前の方で行います。また治療の前後で話しかけたり説明したりして、患者さんの緊張を和らげるようにしています。
言葉のやり取りをすることで、ショックはかなり軽減できるそうです。このため、お帰りになる際も、大人の患者さんには「お疲れ様でした」、お子さんには「今日は頑張ったね」とお声かけをして緊張を解き、次回もまた来ていただきやすくなるようにと心がけています。来院しやすくなれば予防の機会も増えますから、結果的には重症化を避けることができ、患者さんのメリットになります。
最後に地域のみなさまにメッセージをお願いします。
実は歯医者に対する恐怖心は、ご年配の方ほど大きいようです。また費用がいくらになるかわからないという不安も、歯科医院から足を遠ざかせています。まずは「怖い」「痛い」「お金がかかる」というイメージを払しょくするよう努力しています。異変を感じたら、お気軽にご相談ください。さまざまなメニューをご紹介し、患者さんのご都合に合わせた治療をご提案します。
※上記記事は2015.4に取材したものです。
情報時間の経過による変化などがございます事をご了承ください。
上原歯科 上原 祐紀 院長 YUUKI UEHARA
- 好きな音楽・アーティスト: ヒーリング・ミュージック
- 好きな場所: 川沿いの道 町田まで歩いたりします。
- 出身地: 川崎市
- 趣味: 読書、散歩
- 好きな本・愛読書: 主に経済書、ノンフィクションなど
- 好きな言葉・座右の銘: 患者さんを身内のように診察する