坂本 和穗 院長(さかもと歯科医院)のインタビュー

さかもと歯科医院 坂本 和穗 院長

さかもと歯科医院 坂本 和穗 院長 KAZUHO SAKAMOTO

     

歯科医を志したきっかけと、ご専門、開業までの経緯についてお聞かせください。

わたしの出身は九州福岡の炭鉱まち、大牟田です。高校生のころ将来の進路を考える際は、治療で通っていた歯科医師のことが頭に浮かびました。研究熱心で真摯な歯科医療への姿勢はもちろん、地域のみなさんの信頼を一身に集める先生のことを尊敬しており、わたしも同じ職業に就きたいと考えるようになっていました。そして一念発起し、隣県にある長崎大学歯学部に入学することが出来ました。
卒業後、念願かなって尊敬していた先生の診療室に就職させてはいただきましたが、1年後に先生が病に倒れられ、診療所を閉じることになってしまいました。そこで最新の歯科医療を学ぶため、上京することにしたのです。

幾つかの診療所で勤務医として働くかたわら、評判の良い研修や自分の診療に役に立ちそうな講演を積極的に参加。6年間の修養の期間を過ごし、平成10年8月に東急田園都市線田奈駅にほど近い幹線道路沿いのテナントで、開業させていただくことになりました。

田奈は都心にほど近いにもかかわらず、田舎育ちの自分でもホッとできる豊かな田園風景に恵まれた町です。この地で勤務医として雇ってもらった前院長が実家茨城の歯科医院を継ぐため、診療所を譲っていただいたことは幸いでした。そのおかげで壁を彩る自作絵画を貸して下さったり、庭のお花で季節の香りを届けていただいたり、畑で採れた果物で口福をわけてくださる患者さんがたに巡り合うことができました。

診療方針について教えてください。

当たり前のことですが、基本的なことを堅実にやっていくことに尽きます。それにはまず患者さんのお話をキチンと伺い、気持ちをしっかり受け止めることだと考えています。
じっくりお話を伺うことが性に合っておりますせいか、ご高齢者の方も比較的多くお見えになります。私は名画座系の映画やスタンダード音楽が好きで、そういったよもやま話に花が咲いてしまうこともたびたびなんです(笑)。

また、わたしが診療の柱として取り組んでいるのは「予防歯科」という理念です。これは虫歯や歯周病を、痛みなどの症状が出てから対処するのではなく、悪くなってしまう前の健康なお口の状態を保つため、定期検診と継続的メンテナンスを受けて頂き、生涯自分の歯で美味しく食べられることを目的とします。

子供さんのお口の清掃指導にあたっては、ご兄弟やご両親、更にはおじいちゃんおばあちゃんの協力を仰ぐ場合もあります。お口の健康を守る習慣づけはご家庭で育まれますので、家族単位でお付き合いさせていただくのが理想だと思います。

私が今、取り組んでいることの二つ目が「高齢者歯科」です。5年前九州の母が脳出血で倒れた際、お口のケアについて看護士さん方に適切な指示が出せなかったことを悔いて学びはじめました。口の中がネバついて時折苦しそうに咳き込む様子を改善するため、看護士さん方に介護ブラシをつかった口腔清掃や口腔機能亢進のためのマッサージのやりかたを一緒に覚えてもらいました。ちょうどその頃診療所の近くにできた高齢者福祉施設で協力医として症例を診る機会にも恵まれ、特に誤嚥性肺炎予防をはじめとする高齢者のお口の健康づくりに取り組んでいます。

「予防歯科」と「高齢者歯科」、一見関連性がないように思えるかもしれません。けれども、多くのお年寄りのお口の状況を見ていると、若いころから気を付けるべきポインに気づかされます。当院の歯科衛生士は多くの高齢者の口腔ケアに従事していますので、人生のゴールを見据えたうえでの口腔ケア指導として「高齢者歯科」の経験を「予防歯科」に生かしている様子です。

今後も患者さん方の健康づくりをサポートするべく、研鑽させて頂きたいと考えています。ただし、歯科医療の領域は非常に広いので、矯正・インプラント・有病者の方の抜歯などにつきましては、患者さんに特にご希望がない場合、私が自信をもってお勧めできる専門の医療機関をご紹介しています。

医療連携は地域の医療総合力充実の要だと考えます。私は地域歯科医師会の会員ですが、地域の医療ネットワークに参画・活動することが、患者さん方の安心できる地域医療の充実につながってゆくと考えています。

校医をされていて気づいたことがあれば教えてください。

虫歯が激減したことが大きいですね。20年くらい前からフッ素を使った予防歯科が広まってきましたが、その影響からではないかと考えています。かつては多くのお子さんが虫歯に罹患していましたが、最近虫歯のお子さんは1クラスでも数えるほどの方しかいません。
ただ、複数の症状や問題を1人で抱えているお子さんがいらっしゃることが気がかりです。実は「お口の状態」が生活習慣上のさまざまなシグナルを発していることが少なくありません。小さなお子さんですと、1歳半健診や3歳半健診などで異常が見つかることがあります。口は敏感な器官です。これからも注意深く見守っていきたいと思います。

現在はコンビニがあり24時間お菓子が手に入りますが、虫歯が少なくなったのはなぜですか?

お母さん方は、今も昔もきちんとお子さんに目配りをされています。しつけの問題ではありません。虫歯予防に効果があるフッ素が歯磨き剤に配合された影響が大きかったようです。
人間は食事を始めますと、酸によってカルシウム成分が抜け出す「脱灰」と、もう一度カルシウムが歯の成分に取り込まれる「再石灰化」を交互に繰り返します。始めた直後は「脱灰」が進むのですが、咀嚼運動を続けていくうちに分泌された唾液が酸を中和し、さらに唾液中のカルシウム成分が「再石灰化」を起こします。そしてその後の歯磨きがさらに重要な意味を持ちます。

歯の主成分は「ハイドロキシアパタイト」と言いますが、歯磨き剤に含まれるフッ化物(フッ素イオンを持つ化合物)が歯に取り込まれると「フロールアパタイト」という固い歯質になり虫歯に強くなるのです。また面白いことに、虫歯になりやすいところほど選択的に取り込まれ虫歯に強くなる性質があります。

虫歯になると医療費が高くなるため、厚生労働省(当時は厚生省)は歯磨き剤にフッ化物を配合するよう指導を始めました。その結果、国産の歯磨き剤にはほとんど配合されています。ただフッ化物が化学物質であるために、アレルギーを起こす方もいます。生協などではフッ化物抜きの歯磨き剤も作っているようです。 *編集部注:厚生労働省の「e-ヘルスネット」においてフッ化物配合歯磨剤の説明とその普及状況が記されています。
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-02-007.html

ところで再石灰化が正しく行われることと、フッ化物の効き目をよくするためにも、定期的に歯科医院を訪れ、歯石をきれいに取り除くようにしていただきたいと思います。

診察で心がけていることと、地域のみなさまへのメッセージをお願いします。

わたし自身、歯医者さんは苦手でしたから、患者さんが身構えるお気持ちはよくわかります。当院はスタッフ一同、全力で患者さんのサポートに当たっています。失礼がないことはもちろんなのですが、患者さんのお気持ちに寄り添った医療の提供を心がけています。
今年で開業して17年目になりました。わたしの治療をご理解いただき、長く通ってくださる患者さんがいてくださることは、何よりの喜びです。そんな患者さん方にわたしが望んでいるのは、歯科医療を通じて「1人1人が輝いて生きる」手助けをさせていただくことです。

お口の衛生管理は、糖尿病や脳梗塞といった体の自由を奪う疾患から自身を護ってくれることが研究から明らかになっています。他人のご厄介にならず、自分らしく美味しい食事をいつまでも楽しむことが出来ますよう、定期歯科検診においでになることを衷心よりお勧めいたします。

※上記記事は2015.7に取材したものです。
情報時間の経過による変化などがございます事をご了承ください。

さかもと歯科医院 坂本 和穗 院長

さかもと歯科医院坂本 和穗 院長 KAZUHO SAKAMOTO

さかもと歯科医院 坂本 和穗 院長 KAZUHO SAKAMOTO

  • 出身地: 福岡県
  • 趣味・特技: 映画鑑賞、ドライブ、水泳
  • 好きな場所・観光地: 恩田川遊歩道、入梅ころの青田風景
  • 好きな言葉・座右の銘: 「幸せはささやかなるが極上」
  • 好きなアーティスト: ビクター・ヤング、古今亭志ん朝、和田誠
  • 好きな本・愛読書: 山岡荘八「徳川家康」司馬遼太郎「竜馬がゆく」
  • 好きな映画: 「七人の侍」TV「大草原の小さな家」

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