産婦人科クリニックさくら 桜井 明弘 院長 AKIHIRO SAKURAI
大学卒業後、産婦人科を専門に研鑽を積む。豊富な知識と経験をもって、横浜市青葉区に開業。
大学卒業後、産婦人科を専門に研鑽を積む。豊富な知識と経験をもって、横浜市青葉区に開業。
『産婦人科クリニックさくら』では若い方からご婦人に到るまで、全ての女性を対象に婦人科疾患の治療や管理をおこないます。その中で妊娠をご希望される方に向けて体外受精等の高度生殖医療を含む不妊治療を提供致しております。加えて、女性のライフステージに寄り添うという観点から子宮頸癌予防ワクチンや低用量ピル(OC)の普及にも尽力しております。当クリニックのコンセプトである「カラダに優しく、妊娠後にも優しく、こころに優しく」を常に念頭に置いた診療を続けてまいりたいと思っております。
まず不妊治療においては、検査とカウンセリングを通じて患者さんの状況を把握することから始まります。「このバターンの方はこの方法が妊娠におよびやすい」といった、これまでに蓄積された治療データと患者さんご本人の希望をすり合わせていきながらベストの治療方法を模索していくのです。体外受精とは文字通り体外で出来た受精卵を子宮に戻す治療方法になりますが、その際、受精卵を培養液に浸しておく必要が生じます。この培養液には様々な試みがされているのですが、最新のものとしてヒアルロン酸というアミノ酸を成分に含ませた培養液があります。
女性の方は「あっ」と気づかれるかもしれませんが、ヒアルロン酸は化粧品の成分にもよく含まれており、粘着性があります。そして、ヒアルロン酸はそもそも子宮にも卵を受け入れるために分泌されているものなのです。諸条件が整っているのにも関わらず、なかなか妊娠に到らないケースは、何らかの要因によりこのヒアルロン酸の分泌が少なくなっていることが考えられます。
この培養液は本来そこに存在するべきものを補ってあげるためのものなんです。当クリニックにおいても、ヒアルロン酸を成分とする培養液の使用により、妊娠率の向上が見られています。
例えば卵管に障害があれば、これは体外受精しか方法がありません。ですが、体外受精はいってみれば非常に人為的な行為ですから、抵抗感を感じる方が少なくないのも事実です。
お一人お一人によって価値観は様々ですから、その価値観と医学的な側面を合わせていかなければなりません。懇切丁寧に説明をし、患者さんが納得された上で施術を進めてまいりたいと考えております。
ピルは避妊のために作られた薬という経緯がありますので、「ずっと飲んでると妊娠が出来なくなる」といった誤解や「なんとなく、飲んでると決まりが悪い」と敬遠された時代がありました。しかしながら最近では女性の気持ちと知識が変革してきたことで、ピルに対する敷居が以前に比べて低くなっていると実感しています。
また、現在普及が進んでいる低用量ピル(OC)は、これまでのものに比べて半分以下にまでホルモン量が軽減されており、ホルモン剤服用に起因する副作用症状が著しく減少しています。
ピルが子宮内膜症や子宮筋腫に対して有用なことは広く知られてきていますが、同じくPMS(月経前症候群)に対しても有効なことが認知されてくるようになりました。
イライラが代表的な症状ですが、生理前の1、2週間に頭痛や胸痛、腹痛といった症状を伴うこともあるのがPMSと呼ばれる病気です。このPMSはホルモンの作用によって引き起こされることがわかってきており、ピルによって女性ホルモンを低い状態に保つことで症状が改善されるのです。
現在では避妊目的ではなく、生理痛やPMSの症状を緩和する目的で服用する方が大変増えてまいりました。
ピルは女性のQOLを高めるツールとして、非常に有用なものです。
例えば体育の授業を休んだりとか、「生理の辛い時期にテストが来ませんように・・・」といった悩みがピルを服用することでなくなります。学生だけではありません。生理痛を抱える全ての方がピルを使用することで永遠に続くと思われた悩みから解放されるのです。女性が自分の人生をより自分らしく楽しむためにピルを処方することを考えていただければと思います。
最新の統計によると子宮頸癌に罹る方は年間に約8,500人。そのうち約2,500人の方が命を落とされています。この子宮頸癌をもたらすのがHPV(ヒトパピローマウィルス)と呼ばれるウィルスであり、このウィルスは性交渉によって人から人へと移ります。これを未然に防ぐため、インフルエンザワクチンと同じようにワクチンを処方することで解決することを期したのが子宮頸癌予防ワクチンです。現在、中学1年生から高校2年生を対象に全国で無料接種がおこなわれています。
HPVには百数十種類の型が存在し、このうちの十何種類がガンをもたらすことがわかっています。日本で最初に導入された予防ワクチンは、その中の16番、18番というガンをもたらす高リスク型に対して抵抗力をつけるものです。日本人の場合、この2種類の型が子宮頸癌のおよそ6割を占めます。
このワクチンに引き続き、2011年の夏より導入が始まったワクチンは、それまでの16、18番にプラスして6番と11番を足したものです。この6番と11番というのは尖圭コンジローマ等の性病をもたらす型で、ガンをもたらす高リスク型に対し、低リスク型と称されます。女性に対してより幅の広い病気を予防することを可能とした訳であり、より有用性を増したワクチンと言えるでしょう。
意外に思われるかもしれませんが、20代の女性の罹ガン率でいえば、乳がんや白血病を押しのけて子宮頸癌が1位となっています。乳がんの低年齢化は認知されてきていますが、子宮頸癌のほうがより低年齢化が著しいのです。
若年層の子宮がんが増えたことの1番の悲劇はとにかく妊娠が出来なくなるということです。手術によりガンが治ったとしても、子宮を失ってしまえば当然妊娠は出来なくなります。この事の重大さを是非認識していただきたいと思います。失ってからでは全てが遅いのですから・・・。
子宮頸癌予防ワクチンの有用性については申してきた通りですが、かといって接種をすれば子宮頸癌の検査を受けなくていいということではありません。
このワクチンによって6割のガンを減らせることは確かですが、なおも4割の可能性が残ることも確かなことなのです。予防に万全を期するためには検査しか方法がありません。そのことを頭に入れておいていただければと思います。
女性は「子供を作る」ということを人生設計のどこかに入れておいていただきたいと願います。晩婚化と共に晩産化の傾向が近年になり顕著となってきていますが、残念ながら子供はいくつになっても出来るという訳ではありません。統計を見ても35歳を越えると妊娠率は序々に低下してきます。治療を通じてより良い妊娠の状況を作ろうと努力をしたとしても、卵巣の時間までを巻き戻すことは出来ないのです。
もちろん、働く女性の立場からすれば「せっかく頑張ってきてるのに・・・」と思われるのも無理からぬことです。根本的にはそれを困難にする社会的状況を変えるしかないのですが、それを待っていては遅いと思うのです。
おこがましいようですが、1人の女性として出来る事を、いまから考えていただきたいと思う次第です。
※上記記事は2011.10に取材したものです。
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