布施 修 院長(漢方クリニック市ヶ尾)のインタビュー

漢方クリニック市ヶ尾 布施 修 院長

漢方クリニック市ヶ尾 布施 修 院長 OSAMU FUSE

北京中医薬大学で漢方医学と西洋医学を専攻。東京医科歯科大学医学部大学院にて博士号を取得。2014年、「市が尾駅」そばに開業。

開院に至る経緯をお聞かせください。

私は北京中医薬大学で漢方医学と西洋医学を専攻し、東京医科歯科大学医学部大学院において臨床内科学博士課程を修了しました。長年、臨床の仕事に携わり感じるのは、病気に悩む患者さんにとって、医学に西洋と漢方の別はなく、ただこの病気を治したいと思われているということでした。西洋医学と漢方医学、それぞれに得手というものがあり、その両方の特性を生かした医療を展開する必要があると考え、私は開院を決意したのです。『漢方クリニック市が尾』は、2014年の5月にここ市が尾(東急田園都市線・市が尾駅から徒歩2分)に開院致しました。私の患者さんは、全国に及んでいます。広島、兵庫、大阪、奈良、徳島。そしてもちろん、東京にも神奈川にも多数の患者さんがおられます。私は現在も長野県立病院で患者さんを診ていますが、遠方からそちらに足を運んでいただくのは大変です。「これは何とかしなければ」と思っていたところ、1人の患者さんからこちらを紹介していただいたのです。駅近くで利便性に優れたこの場所で、病気に悩む人々に私なりの貢献が出来ればと思っているところです。

漢方による治療について教えてください。

日本で漢方と呼ばれる中医学とは、そもそも何を指すのでしょう? この問いを中国の先生に聞いてみると、「中医とは、中国の伝統医学である」と仰るかもしれません。私はその答えを文献に求めたのですが、それによると、今から1000年ほど前に、「病気が治らない場合は中医を求めよ」という文言に行き当たりました。今の中国が、中国と呼ばれるようになったのは100年ほど前のことに過ぎません。とすれば、中医の「中」とは、中国を指すわけではない。そこからさらに調べ上げますと、「中は和なり」という言葉に行き着くこととなりました。すなわち、中医とは調和の医学ということなのです。頭が痛いから、その痛みを止めるものを出しましょう。これは対症療法として考えれば正しいかもしれませんが、根本的な治癒という意味にはいささか遠いものがあります。中医学では、病気が発症した状態を、バランスが崩れたゆえに起こったと捉えます。漢方を用い、本来のバランスに戻して差し上げ、そのことにより自然治癒力を高め、病気を快癒させることを目指すのです。

食事療法にも取り組まれておられますね?

治療にはお薬を用いますが、同時に中医学の一貫として、食事療法や運動療法を指導していきます。つまり、食事や運動によって身体の調和を取り戻すということですね。日本料理はその他のものと比べ、季節の感覚が強い傾向があります。一例を挙げましょう。日本では冬至になると、かぼちゃを食べる習慣がありますよね。かぼちゃは漢方の1つであり、身体を温める薬効があります。この習慣には、冬の到来を前に身体を温めて備えていきましょうという意味があるのです。
また、夏になれば日本の食卓には、キュウリやトマト、スイカが並ぶようになります。これらの食べ物には利尿作用があり、身体を冷やす効果があるのです。旬のものを摂ることには大きな意味があり、日本の文化には、そのような素晴らしい感覚が残っているということなんですね。
ただ、一方で私は多少の危惧を持ってもいるのです。数人の小学生を連れ、スーパーマーケットに行き、「季節の野菜を教えてください」と、ちょっとした実験のような試みをしたことがあります。結果は、実に半数以上のお子さんがその問いに答えられませんでした。今の子ども達は、旬というものがわからなくなっている。これは非常に問題だと思うのですが、考えようによっては、今なら間に合うとも言えます。折しもここ数年、「和食」は、世界的なブームにもなっていますし、この機会に、旬を食す日本の文化を子ども達にも知ってもらうことが良いのではないでしょうか。

診療の際に心掛けていることをお話しください。

私は診察の際、白衣を着ることはしていません。白衣は血圧の上昇をまねき、患者さんに過度な緊張を与えるという懸念があるからです。私は、患者さんと対等な立場でお話をすることを好みます。そのためにも、白衣はいらないということなんですね。もう1つ。診療時、目の前にいる患者さんの目を見ることなく、パソコンと相対しているようなことに凄く違和感があります。その人を見ずに、何が理解出来るのでしょう。患者さんと共に、健康のこと、病気のことについて考えていきたいと思っているのです。

最後に地域の皆様へメッセージをお願いします。

例えば、お花見の季節。桜の下で、みんなでワイワイと騒ぎ、中には羽目をはずし過ぎてとんでもないことに及ぶ方を見かけることもありますが、それも許容範囲でしょう(笑)。漢方では、人間も自然の一部と考えます。つまり、自然のリズムに身を委ねるべきということ。春になれば桜が咲き、若葉も出てきます。春が来て自然はそれまで耐え忍んでいたものを発散しようとする。お花見は、その自然の動きに人が合わせている行為ととらえることが出来るのです。日本人の長寿の原因は、そこにこそあるのではないでしょうか。人は自然と調和していかなければならない。そのための助けであり指標となるのが漢方であり、私に出来ることで、少しでも皆さんのお役に立っていければと考えています。

※上記記事は2015年4月に取材したものです。
情報時間の経過による変化などがございます事をご了承ください。

漢方クリニック市ヶ尾 布施 修 院長

漢方クリニック市ヶ尾布施 修 院長 OSAMU FUSE

漢方クリニック市ヶ尾 布施 修 院長 OSAMU FUSE

  • 出身地: 中国
  • 趣味・特技: 山登り、家庭菜園
  • 好きな本・愛読書: 原色牧野和漢薬草大図鑑
  • 好きなアーティスト: クラシック
  • 好きな言葉・座右の銘: 努力
  • 好きな場所・観光地: 自然豊かな場所

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