この道に至るきっかけと、これまでの経緯をお聞かせください。
幼少期を鹿児島でのびのび過ごしました。家が開業医ということもあり、父親が地域に密着し、地域の皆さんの役に立っている姿を小さい時から目にしていました。高校生の頃に自分も医学の道に進むことを意識し始めた気がします。医学部在学中、様々な科を勉強するうちに、卒業前には精神科を志すことを決めていました。その理由は体の病気の治療とはまた異なり、同じ医師でも精神科医ならではの役に立ち方があると感じたことが大きいと思います。それでもすぐに精神科の道には進まず、まずは体のことを勉強しようと内科へと進み、内科医として10年近くを過ごしました。今でも、私の医師としての基礎は内科医時代に培ったものと思っています。
その後は精神科医として新たなスタートを切り、これ以前には江田記念病院に勤務して、同院の精神科部長から副院長も経験しました。そしてこの度、本年(2015年)の6月にこの地で開院を迎えたということになります(東急田園都市線/地下鉄ブルーライン・あざみ野駅より徒歩5分)。 自分のクリニックを持つようになって感じることは、患者さんに掛ける時間を調整出来るということでした。たとえば、時間の掛かる方については少し長めに時間をおとりしたり、あるいは、お薬を処方するにしても、より短いスパンで経過を見ながら調整をすることが可能になります。 こうして開院を迎えたのは、様々な方のご尽力があったからこそです。その方々の恩に報いることが出来るよう、地域のクリニックとしての役割を果たしていければと思っています。
『おおさこ心のクリニック』をご紹介ください。
近年、心のケアを必要とする患者さんはますます増えてきています。職場での人間関係、介護の負担など、抱える問題は多種多様です。それらが原因で心や、そして体にも色々な症状が現われてきます。いくつかの科を廻って検査をしたけども異常が見つからず、やや遠回りをされて精神科にたどり着いたという方も少なくありません。原因不明の痛みやしびれ、長引く体調不良でお悩みの方は是非一度ご相談いただければと思います。
診療の際に心掛けていることをお話しください。
必ずしも診断にこだわらない、ということです。しっかりと診断を付け、それに基づいた治療をおこなうことは大切ですが、かといって診断という形こだわるあまり、治療が後追いのような形になってしまうのは考えものです。患者さんが困っていること、悩んでいることに対してアプローチをおこない、それをやわらげていくことが重要と考えています。実際の治療では、精神療法と薬物療法を用いていくことになります。このうちの薬についてですが、患者さんはよく、「薬に頼りたくない」と仰います。精神科に限らず、どなたでも薬を飲みたいという方はいらっしゃらないでしょう。しかし、薬に頼ってはダメだという考えに支配された結果、それが、元で症状が悪化したり、いつまで経っても改善が見られない、では本末転倒です。
ここでは、薬に頼るのではなく、「薬を上手に利用してください」と話を向けます。必要な時に必要な量の薬を使い、症状が良くなれば少しずつ減らしていく。先に挙げた治療と薬は、車の両輪になります。どちらを欠いても良いことはないですし、両方がそろっていてこそ最善の結果が得られるのです。頼るのではなく、自分をアシストしてくれるものとして、上手に薬を使うという意識を持っていただきたいですね。
「もの忘れ」で相談に見える方も多いようですね?
地域でも確実に認知症の患者さんが増えていますが、ご家族の方が最初に気づく認知症の症状が、もの忘れです。しかし、もの忘れがすべて認知症なのかと言えば、決してそういうわけではないのです。たとえば、老年期におけるうつ病の初期症状と、認知症の初期の症状は非常に鑑別しにくいものがあります。仮にそれが老年期のうつに因るものであれば、治療をすることによってもの忘れは改善していきます。つまりこれは、良くなるもの忘れなのです。これをすべて「認知症だから仕方がない」と放置してしまえば、もちろん改善することはありませんし、最悪の事態が起こる可能性もあります。「もの忘れだから認知症に違いない」ではなく、本当に認知症かどうかを見きわめることが非常に重要なのです。また、認知症はご本人はそれほどお困りでなくとも、周囲の方に負担が掛かることが多いものです。患者さんのみならず、周りの方へのケアについてもお役に立てることがあると思っています。
最後に地域の皆様へメッセージをお願いします。
精神科を受診されたほうが良いように思える方こそ、受診そのものに抵抗があり、つらい時期が長引くことが多い傾向があります。といって、ご自身で医療機関に掛かるかどうかを判断するのは難しいものがあるでしょう。病気か否かではなく、少し具合が悪い、ちょっと心配と思われれば、確認のためにも一度いらしてみてください。そこから先は、私たちが責任を持って判断致します。クリニックは、ナチュラルで明るい空間をイメージした造りとなっており、立ち寄りやすい雰囲気になっているかと思います。気になった時、すぐに受診が出来て相談が出来る場所として、皆さんに認知していただきたいですね。
※上記記事は2015.7に取材したものです。
情報時間の経過による変化などがございます事をご了承ください。
おおさこ心のクリニック 大迫 正行 院長 MASAYUKI OSAKO
- 出身地: 鹿児島県
- 趣味・特技: ダイビング
- 好きな本・愛読書: 松本清張の小説
- 好きな映画: 「ショー・シャンクの空に」(1994年、米コロンビア映画)
- 好きなアーティスト: Sade、松任谷由実、山下達郎、竹内まりや、BEGIN
- 好きな言葉・座右の銘: 感謝
- 好きな場所・観光地: 沖縄、南の島全般(ハワイ、モルジブなど)